投げ釣りの獲物

 
 投げ釣りでの初めての獲物はイシモチでした。この魚は結構波打ち際で釣れるので、投げ釣り初心者でも群れにあたれば大釣りできます。

 初心者ですから、アタリは全然分かりません。特に波打ち際では、波が砕けるたびに糸に振動が来て、アタリと間違えてしまいます。また波が引くときはおもりも引っ張られ、これもまた一瞬アタリかと身構えてしまいます。

 そんなことを繰り返していると、本当のアタリはさっぱり分からなくなります。このとき釣り上げたイシモチ君も全くの向こう合わせで、魚が勝手にくっついてきたという印象です。

 リールを巻始めると妙に重い。そんな感じです。そのうち波の切れ目から銀色の魚が上がってきました。「うわー、本当にこんな波打ち際でも釣れるんだ」という驚きと喜びを感じました。

 初めて釣り上げたイシモチ君の体長は25cm以上あり、針をはずすために手でつかむと、腹のあたりでグウグウ言っています。やたら口がでかく、「よくこんな口に小さな針が刺さるもんだ」と思いました。

 しかし投げるという行為は、気分的になかなか良い物です。初めのうちは上に行ったり、下にたたきつけたり、場合によってはリールのベールを挙げるのを忘れて、激しい音と共に糸を切ったりしました。

 しかしやがてタイミングが合ってくると、投げる、糸がしゃーっと出て行く、おもりが落ちる、という一連の流れがひじょうに楽しく思えるようになりました。投げ釣り開眼です。

 以来40年、今でも投げ竿を担いで、湘南海岸や伊豆半島に出かけています。狙う獲物はシロギス。しかしイシモチやカレイ、コチ、ハゼ、カニ、タコなんぞも釣れてくるので、これらは持ち帰り、食べています。

 持ち帰らないものは、ヒトデ、ウミケムシ、キタマクラ、フグ、サメ、ウミヘビ、ベラなどです。50cmぐらいのネコ鮫が釣れたときは驚きました。伊豆の宇佐見での出来事です。

 最近はサーフトローリングというものもたまにやっています。ユミヅノをつけて、思いっきり投げて、ひたすら巻いて来るという重労働ですが、イナダが釣れたこともあり、手応えは抜群です。

 投げ釣りのタイミングはもう充分分かっていますが、投げ方についてはちっとも進歩していません。オーソドックスなクオーターからの投げで、飛距離は調子が良くても100m前後だと思います。

 それでも場所や時期、仕掛けさえきちんと選べば、30cmクラスのシロギスも釣れます。いずれにしても大空に向かっておもりを投げるという行為は、いくつになっても爽快感があります。
 
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