虫との出会いと私の進路選択

 
 小さい頃から生き物には興味がありました。動物園も好きだったと思いますが、どちらかというと身近な虫たちに興味を感じていました。

 虫というものを最初に意識したのは、幼稚園に行く前だったと思います。その頃住んでいたアパートの庭先に花壇があり、この花壇にモンシロチョウやらアゲハチョウなどがよく蜜を吸いに来ていました。

 ヒラヒラした蝶が、どうゆう分けか巧みに花を見つけ、先端に舞い降りたかと思うと、口の先にくるくる巻かれてある吸収管をひゅっと伸ばして、花の奥深くに差し込み蜜を吸う。何とも不思議な光景に見とれていました。

 やがて父親に捕虫網を買ってもらい、花の上を夢中で振り回し蝶をつかまえます。捕虫網といっても白くて長い専用の捕虫網ではなく、赤くて丈夫な深さも20cm程度の、水の中に入れてかき回すような網です。

 それでもそれを持てば一人前。花の上をなぎ払い、モンシロチョウやシジミチョウをつかまえて遊んでいました。しかしアゲハやトンボ、蝉などはなかなか捕まらず、白くて柄の長い捕虫網は憧れでした。

 小学生になると背も伸び、虫の習性も段々分かってきて、いたずらに網を振り回すのではなく、その虫がどちらに移動しているのかを確かめながら、網を構えます。これにより徐々に昆虫の捕獲率が上がってきます。

 同時に草むらに潜むバッタを捕まえるために、丈の高い草むらに踏み込み、虫さされやかぶれに悩まされながらも、いろいろな虫をつかまえました。

 すべて都内の出来事です。あのとき遊んだ草むらは、今はすべてコンクリートの下に隠れてしまいました。

 父親に昆虫図鑑を買ってもらい、捕まえた虫の名前を調べたり、昆虫採集の標本セットを買ってもらい、嫌がる虫たちに無理矢理毒液?と保存液?を注射し、標本を作ったりしました。

 デパートに行くと立派な標本が売られていたりして、その中の見たこともない虫たちになんとか出会えないかと思って、図鑑で必死に生息場所を調べたりしていました。

 小学校の高学年になると、アゲハの幼虫をつかまえてきて、成虫になるまで飼ってみたり、コオロギをつかまえてきて産卵の様子を観察したり、たくさんの蟻をつかまえて、大量の土を入れた手製の箱の中でどうなるか観察したりしていました。

 しかしその頃から徐々に興味は虫から地球や天体といった、地学分野に移行し、星や宇宙に疑問や関心を持つようになりました。虫君達とはちょっとだけお別れです。

 その後私の興味は地学分野から化学分野、物理分野と移り変わり、結局それが今の私の職業である教員に直結しています。小学校の頃の興味関心は大事なんだなとつくづく思います。
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